ゼロの焦点

面白かった。観てよかった!
本当は『沈まぬ太陽』を観ようと思っていたのだけれど、体力を消耗しそうだったのでやめました。松本清張は好きな作家ですが原作は未見、、、ただ、先入観なしに鑑賞出来たのでかえって良かったかもしれません。

新婚早々に金沢で消息を絶った夫を探して、若妻が奔走するのだけれど、そのうちに夫の隠された一面と、時代に翻弄された女たちの運命を知る…という話。単なる謎解きではなくて、テーマは「時代」だと思うのだけれど、なかなか悲しくて、やるせなくて…。観終わったあと、一緒に観ていた総務のTさん(55歳)は、涙を浮かべて、「今っていい時代なのね」といいました。ゼロの焦点は昭和33年の12月をモデルにしています…丁度わたしの母が生まれたころです。
映画を観る直前まで、今回のボーナスの金額はありえないとか、ぶうぶう二人で文句を言っていたのだけれど、生きるか死ぬかの瀬戸際で、そもそも女性が仕事を持つことすら、誰かの世話がなければ難しかったころに比べると…。


楽しみにしていた広末涼子ですが、メイクのせいかあまり冴えなかったです。やっぱりびっくりするほど色素が薄くて、透明感があるのだけれど、薄いメイクのためにアップでは肌のあらがみえた…。ただ、サザエさんヘア的な髪型もその時代を反映していてすごく良かったし、服装も違和感がなかった。とっくりセーター(タートルネックではない)に、垢抜けないワンピースとか、白のくるぶしソックスとか。昔の、貞淑な奥さん、という感じで。やっぱり昔のメイクって、目元よりも眉毛にポイントを置いていたんだなーと改めて実感しました。マスカラも今より普及していなかったでしょうし。

今回は26歳の、世間知らずな若妻役だったので、そのせいか非常に舌足らずなしゃべり方をしていました。26歳の女性って、今ならわりとしっかりした人も多いのだと思うけれど、ヒロインの禎子は、それこそ「学校を出たてのお嬢さん」にみえたよ。すごく幼く、頼りなさげにみえた…。時代のせいかな?

とにかくすごかったのが中谷美紀で、本当に、ものすごくきれいでした。THE・女優!、、、神がかった美しさで、彫刻みたいだった…一応主演は広末涼子だったのですが、完全に主役を食っていました。きれいだし迫力もあった。

今まで、中谷美紀って、どちらかといえば清楚なイメージで、悪く言えばやせぎすで色気がない、と思っていたのですが、今回は…イメージを一新させるような、超・妖艶な、実業家の妻役でした。メイクも、ばっちり濃いのが似合うと思う。

本当にきれいだったー。骨格レベルできれいというか、顔がちいさくて、首が長かった。可愛い広末も、横に並ぶと鈍くさくて垢抜けない人に見えたもの…。

Tさんが、以前から嫌いだといっていた木村多恵も、やっぱり演技はすごくうまくて…幸薄そうな雰囲気、それでもやさしさと情はある、垢抜けない女性を、ものすごく見事に演じていました。

以下ちょっとネタバレもあります。


ものもあふれていて、女性の権利もある程度は保障されている今、何かを求めて必死で戦ったりすることはなくなりつつあるけれど、それでもこういう時代があったことは知っておかなければいけないなーと思いました。

しかし、愛する人のすべてを知りたいがゆえに精力的に行動する禎子の姿は、今も昔もなんら変わらない共感を生み出すことでしょう。「最悪の結果であっても、さっさと知ってしまってスッキリしたいという気持ちもあるんです」と禎子は言っていたけれど、結局、夫の知られざる領域に踏み込んで、その後しあわせになれたのでしょうか。知らないほうが良かったんじゃないのかなーとわたしは思います。

映画が終わった後、Tさんが猛烈に怒っていたのは、「なんだかんだいって、男は、最後にああいう女性を選ぶのねえ!」ということでした。「新しい自分になりたい、禎子とならなれる気がする」といって古い女を捨てた憲一。結局、禎子というのは10歳も若いおぼこ娘で、結婚して妻にするには最適の女だったのでしょう。そして、いろいろな過去を持つ古い女のほうは、一時の安らぎにはなったかもしれないけれど、家庭を築く気にはなれなかったと…。

なんだか、市原海老蔵サトエリ小林麻央の話を思い出してしまった!

そういえばゼロの焦点の広告ポスター、よくみると今回のキーにもなっている赤のコートを全員が着ていますね。どうして禎子も着てるんだろうというところは気になりますが印象的でいいポスターです。