ハゲタカ

投資家から募ったファンドで徹底した合理主義を貫き、企業を買いたたく“ハゲタカ”の異名を取っていた鷲津政彦(大森南朋)は、閉鎖的な日本のマーケットに絶望して海外生活を送っていた。そんな鷲津のもとへ盟友・芝野健夫(柴田恭兵)が現われ、日本有数の大手自動車会社を巨大ファンドによる買収の危機から救ってほしいと頼む。


またまた総務のTさんと観にいきました!わたし達はドラマのほうのファンだったので、意気投合して早速今日のモーニングショーで…。感想は…スケールはめちゃめちゃ大きくて、手に汗握ったけれど、ドラマよりはちょっと落ちるかな…。いやすごく面白いのだけれど、これだけのものを描くには時間が足りないような気がしました。

さすがNHK!!と言いたくなるような超硬派・超骨太の金融ドラマです。大森南朋柴田恭平も渋くて素敵…。

鷲津の、めがねを外したときの遠い目や、いつも憂鬱そうな表情や、時折顔を歪ませるところが大好きです。ただ、今回は悪役の玉山鉄二が格好良すぎて、ちょっと鷲津がかすんでしまってた…思うに、前回のドラマでは、悪役扱いで孤高の存在の鷲津に肩入れしたくなってしまったのだけれど、今回鷲津の周りは味方だらけ。柴野をはじめ、旅館のお兄ちゃん役の松田龍平やら、メガバンクの頭取役の中尾彬やら…。理解を得られないながらも、統一された信念の元、企業買収を続ける鷲津が好きだったので、今回はちょっと魅力が欠けてしまっていました。

玉山鉄二演じる劉一華には、最悪の環境(売血ブローカーに血を売るとか、そんな商売があること初めて知った)から這い上がって必死にやってきたゆえの、凄みみたいなものを感じました。「世の中の不幸は二つに分けられる。金のある不幸と、金のない不幸」という鷲津の独白が劇中にあるのだけれど、劉一華はどちらも知っているんですよね…。それにしても美しい顔をした人です。でもあのラストは。あれが彼に用意された「ポスト」だったのでしょうか?怖すぎ。

高良健吾は今回初めて知った俳優ですが、野心のある派遣工役が見事!でした。このひと、松田龍平と一緒に「蟹工船」にも出演するようなのでかなり期待。。。搾取される状態から立ち上がろうとする労働者役、ということで今回と同じ役柄だと思うのですが、楽しみです。

松田龍平は相変わらず不気味な迫力があったよ…。アカマ自動車の社長役の遠藤憲一は、典型的な、日本の会社の社長!といった風情で、冷静な鷲津に比べると恥ずかしいぐらい取り乱したりしていました。


唯一の華と言えるのが、栗山千明嬢演じるキャスターの存在なのだけれど、それさえ邪魔に思えるほど。というか、栗山千明は普段は好きな女優なのだけれど、今回ばかりは喋るたびにいらいらした。声が高くて(上ずっていて?)少し舌足らずなのがよくないのかな…恐らく慣れ親しんでいないと思われる金融用語なんかを早口で言うのだけれど、舌が回っていないし、板についていない感じがして。未熟な小娘の役をやるなら、それでも良かったのだけれど、キャスターだし服装もパンツスーツだし、知的っぽく話そうとしてアラが目立った感じ。

ドラマのときもそうだったけれど、この物語にこの人は必要ない気がする。ただ、あれだけ美しくて、地的な顔立ちをしている彼女ですら、あのメンバーの中に入ると浮いてしまうのだから、ほかに適役なんかいるんだろうか…。女優じゃないけど作家の幸田真音とか…?

経済の流れの中では、誰が悪とか、誰が正しいとか、そんなことはないんだろうなと思いました。ただ現実があるだけ。アカマ自動車の社長の「この株価が現実だ」という言葉が響きます。ただ…そんな中でも、柴田恭平演じる柴野の存在だけが光です。なんだかほっとする。「それでも私は日本人の勤勉さを信じたい」という言葉は、もう今となっては時代遅れなのかもしれないけれど…。


映画館を出たあと、Tさんは開口一番、「でもねわたし、絶対にお金のある不幸のほうがいいと思うわ。」と言い放ったので、映画の余韻も何もかも吹っ飛びました 笑

ハゲタカ、まだ終わらせないで欲しいな…そしてドラマのDVDが欲しい…。