ヴィレッジ  ※ネタバレ

ヴィレッジ [DVD]

ヴィレッジ [DVD]

職場の同期に感想を聞いたとき、
「あー。結局村から出るなって話。」と言われて、はてそれはどういう意味だろう?と考えながら観たのですが…終わってから納得!!!


まさに、「結局村から出るなって話」…でした。


深い森に囲まれ、外界から孤立し数十人が自給自足で暮らす素朴で小さな村。そこでは皆が家族のように平和に暮らしていた。村に古くから伝わる決して森に入ってはならないという「掟」があり、村人は森の向こうにいる「怪物」を恐れ、境界線を守って暮らしている。それは「掟」を守る限り、森に住む「彼ら」が村の平和を破ることは無かったからである。そんな「掟」がある村に暮らす、盲目の少女アイヴィーが無口なルシアスという青年に恋をしたころから、村に異変が起こり始める…。


というのがwikiのあらすじ、です。



*ここから先ネタバレ含みます*



冒頭は、村の少年のお葬式。薬が無いために亡くなってしまったらしいけれども、その脇に1880年(うろ覚え)…などと書いてある墓の映像が。かつてのアメリカというのがどういうものかわからないし、どの地方なのかも定かではないけれども、
とりあえず村人は牧歌的な生活を営んでいる模様。


そもそもこの映画、確か予告が衝撃的で…。ものものしいナレーションに、家の扉に赤い血のようなもので「×」のしるしが書かれている映像に、森に何ものかが潜んでいる様子に…ともかくゴシックホラー、サスペンス、もしかしたらスプラッタ?とか、この主人公の女の子は森でその怪物に追い回されたりするんだろうな…とか、そういうイメージを観客に抱かせるわけです。
わたしも、きっと怖いんだろうなー一人じゃ観るのやだな…と思いつつ、手に汗握りつつ観ていたので…。


結果から言えば、ホラーを期待していたので、その点からは期待はずれでした。ただ、単なるホラーよりも考えさせられることはあったかも…。わりと思想的な映画だとわたしは思うのですが。



精神薄弱者?のノアという青年が、嫉妬から、アイヴィー(盲目のヒロイン)の彼氏のルシアンを刺してしまう。
アイヴィーは森の向こうの「街」に行って薬を取りにいくと主張…が、父親のウォーカーさん始め、村の長老達はいい顔をしない。
が、結局アイヴィーは森に入ることに。
父親のウォーカーさんは、森の怪物とは、村の長老達がかわりばんこに演じている作り物だったんだよ、とアイヴィーに教える。今まで騙していたなんて!と怒るアイヴィー、でも結果的に森には行くことに。

いざ森に入ると、怪物がアイヴィーを襲う…なんで?怪物はやっぱりいたの?…ということで、アイヴィーは落とし穴に誘い込んで怪物を倒します。


が!!!

観客にはわかるんですが、その怪物とは、ルシアンを指したあと閉じ込められていたノアが、怪物のコスチュームを床下から見つけて、いたずらで着こんでいた姿だったのでした。盲目のアイヴィーにそれがわかるはずもなく、ノアは落とし穴の中で死んでしまう…。


で、アイヴィー「街」に出るんですが…そこで観客は気づくんです。村ではアイヴィー達はかなり原始的な、牧歌的な生活をしているのに、森を出ると普通に車が走って、警官は現代の格好をしている…。


アイヴィーの前にあらわれた警官は当然、アイヴィーの服装やら様子やら(100年前から時が止まってる)をみて怪しみます。が、アイヴィーの苗字を聞き、なんとなく事情を悟るのです。
実は、アイヴィーたちの住んでいる村は、「ウォーカー自然公園」という公園の中にある空間で、アイヴィーのおじいさんの財産で作られた空間だったのです。アイヴィーの父親はじめ、村の長老たちは皆、街で、家族を強盗に殺されたなど、悲しみを負った人たちばかり。なので、ウォーカーさんの私財でもって、争いやお金という概念自体のない、楽園のような村を作ろう!としたわけですね…で、警備員にその森(村?)の周りを保護区として警備して、誰にも見つからないようにした、と。


ただ、アイヴィーは盲目なので、自分の辿り着いた「街」を、
現代社会だとは気づかずに、村よりも都会なんだな〜…といった認識でもって、また森の中の村に戻ります。そして怪物を倒した話を周りにする…。
村の長老達も事情を悟ります。
そして、ノアの真実は明かされることなく、村の中では「怪物はいる」といった認識が続くことに。
その場にいる人間満場一致で、この村…というか閉鎖空間は、今までどおり存続することになりました…、と、
そういう終わり方をしています。


単純かもしれないけれど、確かに面白いトリックです!
特に、100年以上昔の話なんだな、と(冒頭のお墓やら登場人物の服装やらで)思わされていた観客にとっては、アイヴィーが森を抜けた瞬間の描写にはびっくり…!!
そして何も気づかないアイヴィーに あぁもう…ともどかしい気持ちになる…。アイヴィーが盲目なのがキモですね。ノアという人物も、あますところなく活躍(?)している。


ホラー的な観点から言えばあまり楽しめないけれど…でもこういった閉鎖空間の是非とか、実は世捨て人だった長老達…真実を知らないアイヴィーたち第二世代のことを考えると、話に深みが感じられます。村の人口の少なさから、ノアの精神薄弱は近親相姦によるものなんじゃ…などと邪推してしまったけれども考えすぎでしょうか。でも、あの人数で今後も、第二・第三世代と閉鎖空間を続けていくなら、いずれは免れない問題なのかも、と。

冒頭の少年のお葬式シーンで、「この地に来たのは正解だったのか?」というような問いかけがあるけれど、恐らくこの少年の死も、現代の医療やら薬があれば免れたものだったのでしょう…。ルシアスの傷を治す薬を取りに行く、行かない、の話をしていたとき、「でも彼は犯罪の犠牲者だ!(だから薬を取りにいこう)」と繰り返し述べられるんですが、そもそも長老達は犯罪で家族を亡くした者ばかり…だけれど命を取り留めるには誰かが閉鎖空間から出なければならない、村から出ればカラクリに気づいてしまう、それは即ち楽園の崩壊を意味する…矛盾というのか、相当なジレンマだったのではないかと。桃源郷と引き換えに失うものも多々あるのだと思います。
幸いしたのはアイヴィーが盲目だったことなんですが、でも今後もこういった問題が起きたとき、村人はどう対応していくつもりなのでしょうか。

真実を知る者が皆死んでしまったら、そもそも街に行くという選択肢も無くなるのかな…現代社会のことを、村人は知る由もないのだから…そう考えるととても切ない気がします。